Double Fantasy

人気脚本家の奈津 (水川あさみ) は、元ディレクターで夫の省吾 (眞島秀和) と郊外で二人暮らし。主夫に落ち着いてしまった省吾には不満足、実母の紀代子 (多岐川裕美) には貞淑な妻像を押し付けられる鬱々とした日々で、師である演出家の志澤 (村上弘明) に、メールの交換を通じて、いつしか“女”としての拠り所を求めるように。ある日、志澤から密会に誘われる奈津。魔王のように振る舞う志澤に、心も身体も抱かれるが…。

志澤に溺れ密会を重ねるようになった奈津。相変わらず自分を管理下に置こうとする省吾にも耐えかね、遂に家を飛び出す。都心で自分だけの巣を作り、新たな生活へと踏み出すが、その情愛を自由に求めるがあまり、逆に志澤からは冷たく突き放されてしまう。失意に暮れる奈津だったが、招待された映画祭の取材で、記者となっていた大学時代の先輩・岩井（田中圭）と再会する。岩井はかつて短い恋愛関係にあった“昔の男”だった・・・・・・。

「友情」と称して衝動的に岩井と一夜を共にした奈津。親友の編集者･杏子 (篠原ゆき子) の計らいで、宙に浮いていた志澤との関係を清算に出向くが、あまりに冷淡な対応で感傷に打ちのめされ、逆にどこまでも甘やかな岩井との肉体関係に依存を深める。一方、省吾との溝は決定的。見かねた紀代子には厳しい叱責を受け、仕事にも不調を来たす。自由を求める奈津の精神は、未だにエキセントリックな母親の影響下から抜け出せずにいた。

岩井との関係が落ち着いていくのを感じながら、職業的な刺激を受けることで、自己の真の解放についてもがいていた奈津。妻子と一緒の岩井を目撃してしまった失意で、取材で同伴しただけの僧侶（マキタスポーツ）と性を交わすが、反動は虚しく空振る。そこへ現れたのが、志澤の弟子の若手俳優・大林（栁俊太郎）で、乱暴ながら野心的な魅力に新たな予感が・・・・・・。奇しくもそれは、たゆたうようなたった一夜中の出来事だった。

大林のストレートな求愛に身を預けることにした奈津は、嫉妬に狂い始めた岩井を逆に遠ざけるように。そうして奈津は、情や倫理を違えても様々な男と性愛を重ねることで、かえって自身の自由と孤独について理解と覚悟を深めていく。畏れていた母にも遂に対峙、誰の為でもない自分だけの人生を生きる決意を告げる。その夜、空に打ち上げられる花火。奈津はひとり、天国と地獄の間、煉獄に思いを馳せ・・・・・・。